2020年の音楽傑作選
今年よく聴いた音楽のまとめです。
・今年に発表された曲
・Youtubeに投稿されている曲
のみに絞っています。
01.Lil Top / YoungBoy Never Broke Again
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ここ数年の猛烈なブームを経て、音楽の新たなスタンダートとなりつつあるTrap。
Trapとは、808ベースと呼ばれる電子ベース、不規則に細かく鳴るハイハット、ダウンテンポのキックドラムに乗せて歌う、近年のヒップホップのスタイルです。
そのTrapの最先端を行くNBAは、素人目で聴いても恐ろしいラップスキルの持ち主ですが、彼の紡ぐ鋭い言葉や音楽の中には常に独特の切なさが漂っていると思います。
彼はピアノやギターの逆再生など、エレクトロニカやLo-Fi Hiphopでよく使われるような音を好んで使っているような気がします。ここらへんが、他のTrapと違う独特の切なさを生んでいる要因かもしれません。
この曲は「I'm really Top」と繰り返す旋律に不思議な中毒性があって、この一年最もよく聴いた曲の一つです。
(余談ですが、RemansoのCuando Estoy TristeはTrapを意識して作った曲だったんですが、その時参考にしたのがこのNBAのLil Topでした。あの曲は参考にした曲や音楽ジャンルが他にもいくつかあります)。
02.風を食む / ヨルシカ
VOCALOID出身のn-bunaと、ボーカルsuisによる人気2人組バンド。
今年は「花に亡霊」がヒットしましたが、最新曲の「風を食む」がそれ以上に良い曲でした。
グリッジ音混じりのギターのアルペジオから入るイントロがまず良いですね。外の喧騒をシャットダウンして、一気にこの曲の優しい世界へ引き込まれます。
かなりタイトに絞られたドラムとベース音や、音の定位をころころと行き来するパーカッション、ぶつ切りにされた笛音源など、エレクトロニカの要素が結構組み込まれていると思います。エレクトロニカをここまで積極的に取り入れているのは、日本の著名なバンドの中ではヨルシカぐらいな気がします。
深夜のニュース番組のテーマソングらしく、疲れ切った一日の終わりを優しく慰めてくれるような一曲です。
03.HIPHOPは歌えない / 瑛人
今年「香水」で大ヒットした瑛人ですが、実はこの曲の方が香水より後に発表されています。
この曲は、何といっても「HIPHOPは歌えない 俺はリアルじゃないからさ」という1フレーズのインパクトがでかいです。
ヒップホップというと、「いかに上手く韻を踏めるか」だとか、「相手に対していかに早く切り返せるか」という部分がフォーカスされがちですが、最も重要なのは「自分の言葉で歌っているか」という部分なんです。どれだけ実力があったとしても、借り物の言葉では意味を為さないんですね。
この曲のなかで瑛人は、「自分みたいなピース野郎にはリアルなことは歌えない」と心情を吐き出しています。更に、追い打ちをかけるように「現実ばっかを見てたらきっと涙が出るんだ」と歌い上げています。特にこの一文は誰しも共感できる部分があるんじゃないでしょうか。リアルを歌わなければ偽物の表現になってしまいますが、そのリアルを歌うためにはどうしようもない現実をきちんと見なければならないのです。
この曲の面白いところは、「リアルじゃないから俺はヒップホップは歌えない」と歌っているところが既にリアルであり、ヒップホップであるというところです。それを、フォークソングのようなギター一本の伴奏でやっているのがまた愉快だと思います。
瑛人は、簡単な言葉だけを使って他の人が歌わなかった事を救い上げてくる、優れた作詞家だとこの曲を聴いて改めて思いました。
04.てねてね / 悒うつぼ
ずっと真夜中で良いのに、Ado、美波、秋山黄色など、インターネット出身のミュージシャンの勢いが目覚ましい昨今。彼はその中で今一番の注目株だと思います。
「起きて」「働いて」「食って」「寝て」という動詞4つだけでほぼ構成されたメロディーは、一度聴いたら絶対に忘れません。間を意識したリズム、ダウンテンポだけどノレるという今時のポップスの良いところが凝縮されています。どこか懐かしさを感じるキーボードの音色も心地良いですね。
05.Vroom / Futuristic Swaver
韓国音楽といえばKPOPアイドルですが、実はそれと同じくらいにHIPHOPが盛んです。(KPOPアイドルで見ても、グループに必ずラップ担当が居たり、世界的グループとなったBTSも元々はヒップホップがメインであったりと、かなりヒップホップ文化が根付いています)。そして、この曲を聴けば韓国HIPHOPのレベルの高さがすぐに分かります。
郷愁感を誘われるTrap曲です。もう手に入らない、経験することのできない、会うことのできない数多くの事を思い出させてくれる不思議な1曲です。
06.Dolphin / OH MY GIRL
今年大躍進を果たしたKPOPのなかから、お茶の間人気を博したこの曲をピックアップ。
この曲は元々アルバム収録曲だったのですが、あまりの中毒性にじわじわと人気が高まり、韓国の音楽チャートを逆走し続けロングヒットを記録しました。今年の初めの方に発表された曲ですが、未だにTikTokなどでよく使われているので、KPOP知らない人でも聴いたことがあるかもしれません。
音楽チャートを逆走するだけあって、とにかく吸引力の高い曲です。潤いのあるキックドラムとウッドベースの絡みは自然と体がノってしまうし、ゆったりとしたリズムとトロピカルサウンドの組み合わせはまさに最高です。
また、サビ前の「トムボラルリルキョ」のフレーズの音ハメの良さ、ウイスパー成分多めのボーカルなど、他のKPOPにはない魅力が沢山詰まっています(このグループは歌詞の音ハメが非常に上手い)。
OH MY GIRLは皆キュートだし、この曲自体もダンスも可愛らしいので見落としがちですが、意外と音楽自体はかなりベースミュージック寄りなのが面白いですね。ほぼ、ベースとドラムのみで音の骨格が形成されているので、意外と硬派なサウンドなのも良いギャップになってます。
07.Dynamite / BTS
今年のKPOPといえば、まさにこの曲。
韓国人として初の全米ビルボードチャート1位、更にグローバルチャート1位を獲得し大きな話題となりました。日本でもチャートを席巻し、TikTokなどでも沢山使われています。
この曲がこんなに大きな話題となったのは勿論BTSの人気もありますが、それと同じくらいに楽曲の良さが影響していると思います。全編英語の歌詞は、コロナ禍の中にいる私たちをさり気なく励ましてくれる明るい内容で、気取りすぎていないシンプルなファンクサウンドとメロディーはいつ聴いてもハッピーになれます。
この曲は、KPOPというジャンルもファンクサウンドもコロナの出来事も忘れ去られた遠い未来になっても、世界のどこかで歌われているような普遍的なナンバーになるのではないかと、ひそかに思っています。
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他にもいろいろありますが、長くなるのでここで切り上げます。
こうしても見ると後半3曲は韓国音楽ですね。今年いかに自分がKPOPに傾倒していたかがわかる。