今年特に聴いた曲 / 制作曲

 

今年特に聴いた曲

 

01.hibari / 坂本龍一 (2009)

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今年断トツでよく聴いた曲です。

今年逝去した坂本龍一ピアノ曲。映画「怪物」にも使われていたらしいですね。

郷愁的なフレーズが何回も重なり合いながら、独白のように続いていくミニマルな展開。空っぽの白い空間を思わせる楽曲です。

この曲を聴くと、夏井いつきの俳句「空っぽの春の古墳の二人かな」を思い出します。無機質なようでいて、幼稚園の頃に見た、あったかどうかも分からない記憶が蘇ってくる、不思議で暖かな感覚がずっと続きます。

この歳になるともう人生のベストトラックなんてそうそう変わらないんですが、今年新たにこの曲が入りました。本当に大切な1曲です。

ちなみに、この曲に大きく影響を受けて作ったのが「流星に焦げゆく雲雀」でした。

 

02.Cool With You / Newjeans (2023)

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歌手別でいえば、今年一番聴いた人たちかもしれません。

怒涛の勢いで音楽シーンを駆け巡るKPOPのなかで、新星のごとく現れあっという間に頂点に立ってしまった彼女たち。その中で特に刺さったのがこの曲と「Ditto」です。

90年代イギリスのクラブミュージックのような冷たい空気感が漂い、そのサウンドに乗りながら「Cool with you」と軽やかに繰り返すこのビート感が、何度聴いても気持ち良い。

どことなく宇多田ヒカルのAutomaticとかSAKURAドロップスとかも思わせる情緒感も、多くの日本人に刺さった一因だと思います。この時代にY2Kをいち早くやろうとした感覚の鋭さも凄い。

この曲はダンスも秀逸です。Perfume好きな人は間違いなくハマる気がする。最後の携帯カメラの視点を駆使したパフォーマンスも目から鱗でした。

 

03.徒然曜日 / 手嶌葵 (2007)

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元々小学生の頃から好きだった曲ですが、今年入って特によく聴くようになりました。

ゲド戦記で「テルーの唄」がヒットした直後ぐらいにリリースされたこの曲。

水墨画のような淡く抽象的な歌詞を、オーケストラ楽器を用いながら色彩豊かに歌い上げたこの曲。クラリネットの音が大木の中をゆさゆさ駆ける風のように聴こえます。

メロディーの良さもさることながら、編曲の秀逸さを今になって再確認しました。手嶌葵の最高傑作の一つだと思います。

 

04.ヤツメ穴 / 作者不詳 (2013)

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作者が失踪した後に有名になったボカロ(UTAU)楽曲。ボカロめっちゃ聴いてるのに、当時この楽曲のことを全く知りませんでした。

二人が同時に歌いながら、物語が不気味に進んでいく都市伝説のような楽曲。コードは丸サ進行が使われておりますが、このイントロはボカロ史における丸サ進行曲の最高傑作だと思います。一瞬にして引き込まれる。

丸サ進行、民謡っぽいニロ抜き音階、ストーリー形式の歌詞と、ある意味ベタな要素が詰まった楽曲なのに、唯一無二のオリジナリティ性しかない才能の塊みたいな楽曲です。

歌っているのは、ころんば4号と唄音ウタというシンセサイザー。唄音ウタはゆっくり解説でもおなじみのあの声です。

 

05.粛聖!!ロリ神レクイエム☆ / しぐれうい(9さい) (2023)

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今年一番衝撃的だった曲です。多分多くの人にとってもそうでしょう。

この令和の時代に、こんな平成から化けて出てきたような電波ソングが流行るなんて思いませんでした。調べてみたらあのIOSYSなんですね。

幾度もやってくる転調、何種類も畳みかけてくるラップ(というか罵り)、大きなお友達によるレスポンス、そして開いた口が塞がらないういビーム...。

もはやAメロBメロラップサビなんて従来の概念では追いつけない、圧倒的な曲展開は一度聴いただけでは全然理解できません。理解しようとまた聴き返すとやってくるラップ(というなの罵倒)。そしてもうこの曲から逃れられなくなっている。更にクラシックのレクイエム怒りの日をサンプリングしてるところも憎い(けど、最初は他の部分に圧倒されて全く気付きませんでした)。

この曲、邦楽はおろかKPOPですら類を見ないくらいのスピードで再生数を伸ばしていますが、そうならざるを得ないとんでもない魅力に溢れています。

 

06.1000年生きてる / いよわ (2020)

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きゅうくらりん、地球の裏、一千光年をはじめに今年はいよわさんの曲沢山聴きましたが、特に何回も聴いたのがこの曲です。

ムソルグスキーのクラシック曲「展覧会の絵」をサンプリングした楽曲。絵画の中の少女が、絵画を描いた自分たち人間を額縁越しに俯瞰しているという視点で曲が綴られています。作品の中で永遠に生き続ける絵画の中の少女が、自分自身を作り上げた人間たちに対して「骨も残らぬパパママよ」といっちゃうのが強烈です。

自分の表現したいことを創作という行為で形にし、それが世界に影響を及ぼすことを創作者は常に夢見ています。自分自身が骨も残らぬパパママとなった後も、展覧会の絵のように自分の創作物が残り続けていたら、それ以上に幸せな事はないかもしれません。

 

07.人マニア / 原口砂輔 (2023)

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今年最もヒットしているボカロ曲といっても過言ではないでしょう。

まさにボカロの新時代を感じた1曲です。

これ聴くと、素晴らしいめっちゃくちゃ良い楽曲と思う反面、羨望とか嫉妬も感じちゃいますねえ。

こういう楽曲作れないけど、こういう楽曲作りたいなあ。

 

08.ちっちゃな私 / マサラダ(2023)

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人マニアもそうですが、今年は重音テトSynthsizer Vと、彼女を使った新星P飛躍の年だったと思います。

8分音符が主体の、人懐っこさのある明るい楽曲。明るいんだけど、ほろっと泣かせに来る部分もあって、一発で好きになった曲です。

 

09.Ylang Ylang / FKJ (2019)

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TiktokのLiminal Space系の動画でよく使われている楽曲。

ジャズのようなエレクトロニカのような。このずっしりとした質量のサウンドが心地良くて、非常に巧みな楽曲です。ゆくゆくはこういう楽曲を作れるようになりたい。

 

10. Eve psyche and bluebeard's wife / LE SSERAFIM (2023)

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アルバムのTeaser時点で物凄く気になってた曲でした。

サビ終わりの鮮やかな転調からの「I'm mess...」のフレーズが、冷ややかでクール。イギリスやヨーロッパのクラブミュージックを思わせる冷静さ、無機質さを感じます。アメリカの熱っぽく荒い感じではない感じがしますね。

LE SSERAFIMはANTIFRAGILEの時もそうでしたが、他のKPOPグループと比べてもかなり硬派で突き放したような音楽を鳴らしていると思います。こういう楽曲が、ポップスのど真ん中として人気を得ているという事実に、未だにささやかな驚きを感じます。少なくとも、10年、20年前のJPOPシーンじゃあり得なかったし、たぶん韓国でもそうだったでしょう。

 

今年製作した楽曲

 

01.砂漠のビル街

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エクアドルの民俗音楽「サンファニート」をハウスミュージックで表現した曲。

サンファニートはかなりテクノっぽい要素が強く、同じフレーズの繰り返しによる高揚感、極めてシンプルなコード進行、ボンボによる四つ打ちのリズムなど、電子音楽との相性が抜群だと思います。フォルクローレ電子音楽の組み合わせにはもっと可能性があるはず。

 

02.流星に焦げゆく雲雀

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坂本龍一の「hibari」に影響を受けて作った楽曲。hibariのメロディーが何度か出てきて、この曲の一番の盛り上がりのところ(EDMでいうDrop部分)に配置しています。

この楽曲辺りから、夢日記をつけるかのように歌詞を書くようになってきました。前までは楽曲を能動的につくっている感覚だったんですが、最近作曲は、見ていた夢を思い出しながらノートに映像を描写するように、無意識の中から詩や芸術になるものを拾い上げてきてるような感覚があります。

非常に自分らしい楽曲が出来たと自負している意味ではかなり自信作なんですが、いかんせんマスタリングがあまり良くなかったね。新アルバムに収録する際は、歌詞も若干修正しながら大幅にリマスタリングしようと思います。

 

03.18才のコレクション

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偏見をテーマにした楽曲。テーマ性や書きたいメッセージ性が割とはっきりしてたので、すらすらと歌詞が書けて良かったです。

元々はラジオのテーマソングかつBGMとして作った曲なので、イントロもそれをイメージしています。イントロのメロディーからどんどんイメージを拡張して出来上がった曲です。曲時間が短いのも、ループを前提に作ってあるためです。あと、歌詞が簡潔に表現できたので、もうこれ以上書く必要もないかなと思ったのもある。

韻が結構綺麗に決まってるので、聴いてて気持ち良いですね。

トラック数が多分10ちょっとしかないので、かなり音数が少なめ。コードはNative InstrumentsのKinetic Metalというシンセサイザーを使ってます。かなり個性的な音が鳴ってますが、この曲にはドンピシャでハマってくれました。

 

04.泡沫花火

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去年楽曲事務所に所属していた時、関ジャニ∞へのコンペ曲として1番だけデモで作った曲です。メロディーとかコード進行が気に入ってたので、完成させようと思って、データを引っ張り出しました。

自分で言うのも何ですが、聴くたびに良い曲だなぁーと思います。抽象的な響きのコードと、ニロ抜きのメロディーが美しい。大塚愛金魚花火をちょっとイメージした部分もあるかも。僕が思う夏のJPOPのエモさを表現できた気がします。

 

05.HOld Hands

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ずばり僕の実体験を込めた片想い曲。ここまで直球のラブソングは初めて書きました。

deepと地続きになっている曲として作った楽曲です。

「付き合う直前くらいの関係性がいっちゃん幸せ」みたいなこと言ってる恋愛系Youtuber共と、それに共感してクソみたいな恋愛観をどや顔で語りまくってる恋愛馬鹿が嫌い過ぎて出来たのが一番サビの歌詞の一部です。この部分を核にして、発想を広げながらつくりました。

可不の調声に前より慣れてきたので、今までの曲と比べてより拘りました。可不はほんとに優秀なシンセサイザーなので、やりがいがありますね、打ち込みすげえ面倒だけど。もっと色々歌わせたい。

 

06.月虹

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酔っ払いながら作曲していた時にできたデモを基に作った曲。基本作曲ってシラフじゃないと僕は出来ないので、酔っ払ってるときに良いものができることもあるんだなってちょっと感心しました。

星の夢とほぼ同じコード進行です。この同じところをひたすら足踏みしつづけるような、極めて抽象的な響きのコード進行が物凄く好きなんですよね。この気持ち良い響きをひたすら繰り返しながら曲を進行させたいという発想から出来た曲です。

僕が一番表現したいジャンルである、エレクトロニカIDMといった内向的な電子音楽をド直球に作れた気がします。最新作にしてこれも結構な自信作です。

それから、最近Liminal Spaceに物凄くハマっていて、この界隈自体が僕の表現したいものと近しい物を感じるので、その影響も多分に受けています。この動画自体もLiminal Spaceを意識しました。

ジャンル的に結構ニッチなのでそんな伸びないだろうと思ってたんですが、Bilibili動画でかなり反応が良いので非常に嬉しいです。寄せられたコメントには、僕が意図して表現した部分をくみ取って共鳴してくださってる方も沢山いらっしゃって、本当に音楽を製作していて良かったなと思います。

今後はもっと、僕の音楽に共鳴してくれる人たちをどんどん増やしていきたいです。

 

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今年はあと、Twitterの話題に便乗して「自分の事は努力もせず全部理解して評価してほしいという割に周りの大人や友達への解像度が低くてステロタイプな甘ったれた曲」なんてネタ曲も作りました。ニコニコランキングでデイリー2位まで行けたので、話題に乗るのって大事だなと思いました。あとリリカピアノと丸サは強い。

今年、まだ楽曲製作はするので発表できたら良いけどどうだろうなあ。ヒップホップを自分自身で歌いたいと思ってる。